uzumaki blog|アートディレクター/グラフィックデザイナー 宮田圭介の日々を綴っております。

岐阜と東京における書店事情の違いを考えてみた。

また書店についてです。
3年前、東京に出てきたときに、驚いたことがあります。
「東京には、小さな、いわゆる”街の本屋さん”がたくさんある」ということに、とても驚かされました。歩いていると頻繁に”街の本屋さん”に出くわすんです。もうとっくに絶滅したと思っていたのに、東京ってスゴいぜ!(どこに感心してんだか・・・)とか思ってました。
僕がいた岐阜県というのは、駅前など、よほど良い立地を確保しているところや、学校の教科書を販売しているようなところは別として、小さな書店はほとんど潰れています。中規模でも簡単に潰れちゃいます。一方で、国道沿いの大型書店(カルコスとか・・・懐かしい)や大型スーパー内の書店はいつもたくさんのお客で賑わっています。
これは岐阜に限らず、多くの地域で見られる現象ではないでしょうか。
一方で東京ではどうかというと、ターミナル駅周辺のブックファーストや紀伊國屋、ジュンク堂といった大型書店はいつも本当にたくさんのお客で混雑していますし、あおい書店や三省堂といった中堅どころの書店や、その他個人がやっているような小さな書店にもそれなりにお客が入っています。この違いはいったい!?


・・・原因を考えてみました。

原因1:岐阜と東京、そもそも人の数が違う。
原因2:岐阜が超車社会であることに対して、東京は徒歩人口が多い。
原因3:岐阜では大型スーパーばかりに人が集中するが、東京ではうまく分散されている。
原因4:amazonなどネット書店の浸透による、リアル書店の役割の変化

まず「原因1:岐阜と東京、そもそも人の数が違う。」について。
そりゃそうだ。人が多い方が、本が売れるチャンスが多くある。これは仕方が無い。でも、岐阜でも昔は小さな書店がいっぱいあったんだ!これはどう説明するのだ?
では次、「原因2:岐阜が超車社会であることに対して、東京は徒歩人口が多い。」について。
岐阜では、成人すると”車は1人1台”が半ば常識になります。車が無いと、何も出来ないんです。(何も出来ないというと言い過ぎかもしれませんが、かなり不便します。)この傾向は今後もどんどん強くなっていると思います。
会社に通えない。遊びに行けない。友達の家にも行けない。食料品や生活雑貨を買うにも不便します。第一、コンビニに行くのも車だったりしますから・・・
でも、車を手に入れたとたん、一気に行動範囲が広がって、とっても便利に暮らせるようになるんです。すると、自然と小さな書店には行かなくなります。小さな書店はその面積から、当然置いてある本の種類は少なくなるわけですから、欲しい本が置いてない確率は高くなりますからね。(本屋に本を探しに行って、無い時のあの腹立たしさといったら!)
それよりも、車をちょっと走らせれば、国道沿いに大型書店があって、そこにはたいていの本があって、広い店内で、じっくり本を探せるんです。そりゃ大型書店に行きますよね。当然です。
本が欲しいなら車で近所の小さな書店の前を通り過ぎて大型書店に行ってしまうし、その他のもの、例えば食料品を買いに行くときにも、車で近所の小さな書店の前を通り過ぎて大型スーパーに行く。すると大型スーパーの中に中~大型書店があるので、食料品を買うついでに本を買う。つまり、本を求めている時も、そうでないときも、車で移動する限り、小さな書店に立ち寄る機会がほとんど無いんです。わざわざ途中で車を止めて降りて、小さな書店に立ち寄る理由が無い。
それでは東京の方に目を移してみましょう。
東京都心では徒歩人口が非常に多いです。地下鉄、バス、タクシーがとても充実しているので、車よりも徒歩の方が小回りが利いて便利。
東京のサラリーマンの一日を想像してみてください。朝起きて家を出る。歩いて駅へ向かう途中、小さな書店がある。会社の近く、営業先の近くには中型書店がある。夜、仕事を終えて帰る途中、ターミナル駅には大型書店がある。何がいいたいかというと、歩いて移動している人が多いから、小さな書店から大きな書店まで、そのエリアの人口密度に応じたお客との接点が平等にあるんです。当然大きな書店の方が、その品揃えと立地の分有利ではありますが、小さな書店でも店の前を歩いて通る人がたくさんいる限り「ちょっと立ち寄る」お客を相当数期待出来る。これは岐阜とは大きな違いです。
次。「原因3:岐阜では大型スーパーばかりに人が集中するが、東京ではうまく分散されている。」
岐阜では、休日にどこに行くか・・・名古屋にも行きますが、毎週ではありません。それよりも頻繁にジャスコに行きます。イトーヨーカドーに行きます。食料品はもちろん、家具も、家電も、化粧品も、服も、CDも、ゲーセンも、車も、そして映画館も、ボーリング場もある超巨大ショッピングモールです。駐車場は数千台規模(!)です。それでも休日はパンパンになります。そしてそういったお店には100%、中~大型書店があります。そしてその巨大なショッピング施設を歩いてブラブラしてる途中、ちょっと書店に寄って本を買います。
こういった巨大ショッピングモールは次々にオープンし、それに反比例して地元の商店街は寂れ、シャッター街と化していきます。恐ろしい。
一方で、東京の都心部には岐阜にあるような”全てを備えた大型ショッピング施設”はあまりありません。人がそこにばかり集中するような、極端な人気のレジャー施設もありません。東京は選択肢が多いので、人が分散するんです。それも多くの人は歩いている。だから小さな書店にも本を売るチャンスがあります。
実際自宅のすぐ近くには、「昭和?」と言いたくなるような昔ながらの商店街があって、いつもたくさんの人が買い物をしています。
最後に、「原因4:amazonなどネット書店の浸透による、リアル書店の役割の変化」について。
amazonは本当に便利です。僕もしょっちゅう使ってます。特に、買う本が決まっているとき、その検索性の高さからくる便利さは感嘆ものです。また、アルファブロガーが薦める本(※1)は、ブログから直接amazonにリンクされていて、簡単に買える。しかも実質送料無料(※2)で届くのも早い。
でも、ネット書店が便利になる一方で、リアル書店にお客が来なくなったかというと、そんなことは全くありません。リアル書店にはリアル書店の強みがあって、ブックファーストや紀伊國屋はいつ行っても混雑しています。
ネット書店とリアル書店でうまく役割分担ができているんでしょうね。
そこで、こういうケースではリアル書店の方が便利だよねというケースを考えてみました。

A:手に取って、内容を読むことが出来る。
やっぱりこれが一番大きい。いつも買っている雑誌やひいきの作家の本など、最初から買う事を決めているならともかく、迷いがある時や、初めて見た本、ビジュアル書なんかは中を見てみないと、判断出来ない。(amazonでは”なか見!検索”というサービスで数ページだけ見れたりしますけど、まだまだです。)
B:その場で手に入る。
お金を払えば、その場ですぐに手に入る。読みたい本は、今すぐ読みたい。ネット書店がいくら便利になっても、この点は敵わないでしょうね。
C:同テーマの本が同じ場所にズラッと並んでいるので探しやすい
特に、気になるテーマがあるときに何冊かの本を比較検討しながら選びたい場合なんかは、とても便利。amazonでもある程度は同テーマの本が表示されるけど、一度に表示される量が少ないし、その場で読めるわけでもないので不便。
D:本との偶然の出会いがある
探していた本以外でも、ちょっと視界に入ってきた本が気になって、パラパラ中を見て、そのまま買うという事はよくある。また、書店員が勧める本はマイナーでも平積みされていたりPOPがついていたりするので、”良書との偶然の出会い”が期待できます。これも楽しい。
amazonでもランダムに表示される本の中で気になるものがあったりしますが、実際に中を見れないと、なかなか買う気にはなれません。

おおお・・・リアル書店、全然良いですね~まだまだネット書店に負ける気がしません。
でも、これらのリアル店舗の強みのうち、C.とD.は、ある程度の規模、中~大型書店でないと、店舗スペースの都合から対応出来ない。小さな書店では置ける本が限られてくるので、広く浅く、そして確実に売れる本→「ベストセラー系」に偏ってしまいます。となると、小さな書店は不利。さらに、岐阜の小さな書店と、東京の小さな書店とでは、前述の1、2、3の理由から、圧倒的に岐阜の小さな書店が不利。
うむむむ・・・
考えれば考えるほど、岐阜の中小書店がうまくいく要素が無いぞ・・・
そりゃなくなるよな・・・
※1.小飼弾氏のブログ「404 Blog Not Found」を参考にしてよく買ってます。
※2.正確には1,500円以上送料無料ですが、安い本でも2~3冊買えばその条件は満たせます。

| diary | 7:47 PM | コメント(0) | トラックバック(0)
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