uzumaki blog|アートディレクター/グラフィックデザイナー 宮田圭介の日々を綴っております。

印刷工場見学レポート

いつもお世話になっている印刷会社さんの工場におじゃましまして、弊社が依頼した案件の印刷の様子を見学させていただきました!

せっかくですので、デザインが出来上がった後、どのような印刷工程を経てお客様の元へお届けしているのかをブログでもご紹介したいと思います。

そして、現場を見せていただいたからこそ分かる、印刷に関わる方々の徹底したこだわりポイントも、本記事の見どころですのでぜひ注目しながら読んでみて下さいね。

〈知識編

1.そもそも「オフセット印刷」とは?

2.よく聞く「オンデマンド印刷」との違いって何

3.オフセット印刷の工程

4.印刷前に確認!「色校正」

〈印刷工場編〉

5.  オフセット印刷の要!「版」をつくる

6.  いよいよ本番の印刷へ!

7.  実際に印刷の現場を見学して

工場見学の前に、まずは印刷に関する前知識をお伝えします。

1.そもそも「オフセット印刷」とは?

今回見せていただいたのは、「オフセット印刷」という印刷方式。版を必要とする方式のうちの1つで、ポスターやパンフレットなどの印刷でよく使われます。版とは、版画でいう、彫刻や細工を施した木や金属の板と同じ役割をします。その版にインクをつけて紙に印刷をしますが、その版の作り方やインクののせ方違いで様々な印刷方式があります。新聞や書籍の印刷に使われる凸版印刷や、写真の印刷に向いているグラビア印刷、衣服などの印刷で使われるシルク印刷などがあります。

2.  よく聞く「オンデマンド印刷」との違いって何

気軽に印刷を頼める「オンデマンド印刷」。そもそも「オンデマンド」とは「要求に応じて」という意味。必要なときに短期間で少部数から注文できる印刷サービスのことです。オンデマンド印刷と呼ばれる印刷方式は、版を必要としないものがほとんどです。版をつくる工程を省くことで短期間での印刷が可能になるからです。

オンデマンド印刷で多いのは、版をつくるというアナログ作業がなくデジタルのみで完結する「デジタル印刷」になります。家庭用でも使われるインクジェット方式や、オフィスにある複合機と同じ仕組みのレーザー方式などがそれにあたります。

皆さんがよく耳にする「オフセット印刷」と「オンデマンド印刷」の違いをまとめてみたので、参考にしてみて下さい。

ちなみによくいう「ネット印刷」とはインターネットで注文や印刷データのやりとりを行う印刷サービスのことを指します。ネット印刷とデジタル印刷、オンデマンド印刷はデザイナーであっても混同しがちですが、実はそれぞれ意味が違うので、正しく使い分けられるとコミュニケーションがよりスムーズになります。

3.  オフセット印刷の工程

それではオフセット印刷では実際どのようにして印刷物が出来上がっていくのか、ご紹介したいと思います。デザインをお客さまに確認していただいて、デザインデータが完成したところから。

4.  印刷前に確認!「色校正」

いきなり本番の印刷はせず、まずは「色校正」というものを行います。本番に近い、あるいは本番と同じ印刷環境でサンプルを印刷してもらい、紙での色の見え方を確認することです。サンプルを見て、印刷会社の方に修正をお願いしたり、何度も校正を繰り返したりして、イメージ通りの色で本番の印刷をむかえられるよう調整してもらいます。お客さまにも修正後のサンプルを見ていただいてゴーサインが出ましたら、いよいよ本番の印刷に入ります。

修正依頼の赤字を書き入れた色校正

5.  オフセット印刷の要!「版」をつくる

その前に、印刷のコトを話す上で欠かせない色のことについて。フルカラーでの印刷は基本この4色「CMYK」(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の掛け合わせで表現しています。

長い前おきはここまで。ここでようやく工場の様子をご覧いただきましょう。

それではまず、「版」をつくっていきます。デザインデータをCMYKの色ごとに分解します。分解したデザインデータのフィルムと青い感光剤が塗布されたアルミの板を使い、写真の現像の仕組みと同じように焼き付けて、CMYKそれぞれの版を製造します。出来上がった版は汚れなどがないか人の目で徹底チェックします。

写真を見てみるとポストカードのデータが大きな板に敷き詰められた状態で版が製造されているのが分かります。この製造方法には以下の理由があります。

紙には様々な規格の「全紙」と呼ばれる、大きなシート状の原紙があります。馴染みのあるA4はA本判と呼ばれる全紙を断裁したサイズです。印刷でよく使われる全紙には四六判や菊判と呼ばれるサイズがあります。どの全紙を使用するのか、デザインデータをどのように敷き詰めて印刷するのか、効率やコスト・断裁時の紙のロスを考慮しながら決定した結果、ベストなサイズと敷き詰め方の版が出来上がりました。

6.  いよいよ本番の印刷へ!

前段階でつくったCMYKの4枚の版を使って、本番用の紙に印刷していきます。オフセット印刷の最大の特徴は、水と油(インク)の反発を利用した仕組みです。先ほどつくった版の青い部分は感光剤が残った部分で親油性なのでインクがのり、その他の部分には水がつきます。その版についたインクをゴム製のブランケットと呼ばれるローラーに転写(オフ)し、そのインクをブランケットから紙に移し(セット)ます。ブランケットがクッションの役割をすることで摩擦なく大量に印刷ができます。この工程をCMYKそれぞれで行い、UVで乾かすことで、フルカラーの印刷物ができ上がります。

4.の色校正の際にも色の調整を何度も行いましたが、ここで最終調整をしていきます。オペレーターさんがコントロール画面を見ながらインクの量を調節したり、目視で印刷物の色を確認したりを繰り返して、イメージ通りの色へ仕上げます。また汚れなどのエラーがないか2人体制で念入りに確認していきます。さらに、湿度や温度も一定にして印刷環境も徹底的に整えることで、美しい印刷のポストカードが出来上がりました。

あとは封筒の印刷と、断裁や型抜き、組み立てなどの加工が施され、仕上がったものがこちら。

多くの方々のご協力を経て仕上がった、株式会社ジンテック様の暑中見舞い。

そして梱包・発送されて、ついにお客さまの元に届きます。このクリエイティブに関する解説も、またの機会にできればと思います。

7.  実際に印刷の現場を見学して…

色校正から始まり、修正や確認作業などを経てつくりあげたデザインを、印刷会社の方々が丁寧に引き継ぎ、1つ1つの工程で素敵な印刷物として形にして下さっていく、一連の流れをご紹介してきました。

その中で、人の目や手で入念に行われる確認作業や印刷に最適な環境づくりなど、様々な所で見られる徹底ぶりを目の当たりにして、印刷物がさらに好きになりました。

読んで下さったみなさん、お手元にある、印刷が施されたパンフレットや本の表紙などをじっくり見てみてください。それらも今回ご紹介したポストカードのように、多くの人の手で丁寧に作りあげられたものだと思うと、より大切にしたくなりますね。

ここまでお読み下さりありがとうございました。

以上、印刷工場見学レポートでした。

次回のうずまきブログもお楽しみに♪


ご協力いただいた会社様

株式会社北斗社

創業70年の歴史を持ち、印刷業からウェブ・ビデオ制作、スマートデバイス対応サービスへと業務を拡大してきました。また環境への配慮としてFSC認証の取得やプライバシーマーク認定などCSRの活動にも取り組んでいます。  
情報過多の時代において、効率的なメディア戦略を提案し、コミュニケーションのビジネスパートナーを目指しています。

https://www.hoku.co.jp/

■株式会社ジンテック

日本で初めて商業ベースで電話番号調査による様々なサービスを開始。通信関連情報を駆使した情報サービス業、SMS配信サービス業等を展開。企業向けにSMS配信サービスや、マーケティング・与信に活用できる電話番号情報、IPアドレス情報等を提供。法人向けの住民票の取得代行サービスも行う。

https://www.jintec.com/

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