uzumaki blog|アートディレクター/グラフィックデザイナー 宮田圭介の日々を綴っております。

これいいね! で、いくらなの?《第1回:後編》

街で見かけたグッドデザインをご紹介しつつ、uzumakiの制作費見積を公開します。

街で見かけたグッドデザインをデザイナー目線から(勝手に)解説、ご紹介し、その制作をuzumakiが担当した場合はいかほどの費用がかかるのか?を、(勝手に)見積書を作成、詳細な解説と共にご紹介します。これを、前編/後編に分けてお届けします。

前編をまだご覧になってない方はこちらからご覧ください。

これいいね! で、いくらなの? 《前編》

それでは、後編が始まります!

〈CAUTION! ご注意事項〉

※注1:弊社の制作事例ではありません。街で見かけたグッドデザインのピックアップ記事です。

※注2:見積書は街で見かけたグッドデザインの最終的な成果物のみを見て、uzumaki ならこれくらいで制作できるだろうと算出した、ある意味無責任な見積です。もしかしたら、企画案・デザイン方向性が決まるまでに膨大な作業があったかもしれませんし、その場合はコストは跳ね上がります。しかし、そこに至る過程は外部から知り得ない情報のため、見積からは除外しております。

※注3:Komatsu Reconstruction Challenge プロジェクトとして様々な制作物があり、全体でグロスで制作されている可能性は高く、その場合はクリエイティブ素材(イラストやコピー要素など)の流用をすることで全体の費用を抑えられる可能性が高いです。しかし、これについてもプロジェクトの全体像は外部から知り得ない情報のため、あくまでも仮囲い単体の成果物のみを見ての見積となります。

《後編》
で、いくらなの?

後編では、この制作物を仮にuzumakiで請け負ったとしたらお幾らなの?をお見積書と共に詳しくお届けします。
では早速、弊社の見積書をご覧ください。

…結構細かいなと思われた方も多いのではないでしょうか?
昔はもっとざっくりな、項目数が少ない粗い見積書だったのですが、多くのお仕事をする中で試行錯誤がありました。お客さまに対して、どんな工程があり、それぞれの作業に幾らかかってるのかが分かりやすくなるようにしたいと考え、最終的にこのようなカタチに落ち着きました。これは、弊社内にとっても分かりやすく、コストを抑えるにはどこを削るか…を検討しやすくなるという効果がありました。

弊社の見積書は、大きく分けると以下6つに分かれています。そして、工程として概ね上から下へ順番に進んでいく、という構成になっています。

1.企画・ディレクション費
企画及びアートディレクションに関わる費用

2.提案費
プレゼンテーションのためのイメージラフ作成に関わる費用

3.実制作費
企画確定後のデザイン、コピーライティング、イラストなどの作業費

4.撮影費
スチール撮影や映像撮影に関わる費用

5.印刷・配送・施工費
デザイン後の製造から納品までに関わる費用

6.進行管理費
制作〜納品までを滞りなく進行させるための費用

1.企画・アートディレクション費(企画及びアートディレクションに関わる費用)

今回の記事では「リ・コンストラクション」プロジェクト全体の「面」ではなく、あくまでも仮囲いという「点」で捉えての見積となりますので、「リ・コンストラクション」というコンセプトが既にあり、それをいかに仮囲いで表現するか?の企画であり、アートディレクションであると考えます。

また、社内に制作チームがあるお客さまの場合、大枠が固まっている事があります。「仮囲いに様々な標識風グラフィックでリ・コンストラクションを表現してほしい。その表現をいかに行うかの企画・デザインを依頼したい。」というケースなど。その場合は企画費をもっと抑える事ができます。

2.提案費(プレゼンテーションのためのイメージラフ作成に関わる費用)

立案した企画を言葉だけで伝えてもなかなか伝わるものではありません。クリエイター同士であれば、「コンセプト」と「〇〇みたいな表現で〜〇〇なトンマナで〜」と、言葉と最小限の資料画像を添えるだけで、共通認識を持つことができますが、お客さまはビジュアルづくりの専門家ではないため、イメージする事が難しいからです。そこを補うためにあるのがこの工程です。

プロトタイプとして具体的なイメージラフを作ってお見せすることで、この企画がどんな仕上がりになるのか、を、プロジェクトメンバーの皆様が具体的にイメージすることができるようになります。

プロジェクトの規模感にもよりますが、2〜3案ご提案することが多いです。弊社側でコレ!というオススメがある場合でも複数案持っていく事が多いです。それは、意見交換の材料にするため。「コレは違う、それはこういった理由だから。」と「違う事が分かった」事にも価値があります。お互いの考え・認識を擦り合わせるためには複数あった方が精度が高まります。

他に、1案決め打ちでは、「他により良いやり方があるのではないか?」「思いついた!」といつまでも考えて、アレコレこねくり回してしまう危険性もあります。そうなると、強引に増築を重ねた違法建築のような歪な仕上がりになってしまう事もあり得ます。事前に複数の方向性の中から意見交換をしながら、お互いに納得感を持って決めていれば、その後迷い無く制作を進めることができます。

潤沢な予算と納期がある場合は、大量のデザイン案を複数回にわたって提案して、徹底的に検討を重ねる事もありますが、それは例外的なケースになります。

3.実制作費(企画確定後のデザイン、コピーライティング、イラストなどの作業費)

プレゼンテーションを経て企画が決まった後、実際の本番向けデザインデータを制作するフェーズの費用です。

デザイン費について、標識を1個あたりのデザイン費×個数、という計算の仕方もできるのですが、見積提出時は個数までは決まっていないことがほとんどです。そのため、面積からざっくりの費用を算出します。

Google MAP から大まかな長さを算出

提案後、お客さまからのご要望をふまえた上でより詳細な見積書を再度提出する事もありますし、企画案ごとに異なる見積書を作成(PLAN_A,B,Cのように)し、初回提案時に複数提出することもあります。

4.撮影費(スチール撮影や映像撮影に関わる費用)

今回は撮影はありませんので空欄になっています。

5.印刷・配送・施工費(デザイン後の製造から納品までに関わる費用)

大中小のカッティングシートの大まかな数を想定し、設定します。ここはデザイン後に変動する可能性があるので、デザイン確定後に再見積を提出する事になる可能性が高いです。

校正(出力サンプル確認)に関しては全てのシートに対して行うととんでもなくコストがかかるので今回は大中小各1シートだけ行うと想定しています。

今回はカッティングシートのためサイズと部数のみの比較的簡易な表記に留まっていますが、紙の印刷物(ポスター,チラシ,パンフレット)の場合はこの欄に用紙の種類、斤量、加工の内容なども記入していきます。記入しきれなくて欄外に追記することも多々あります。これも、お客さまと弊社側、双方にとって分かりやすく、誤解無くプロジェクトを進めるために大切にしている事です。

※Web案件の場合はこの欄は「構築」となり、コーディングやプログラミング、サーバーの費用が入ってきます。

6.営業・進行管理費(制作を滞りなく進行させるための費用)

プロジェクトを滞りなく、予定通りに進行するために必要な費用です。大きめの制作会社ですと “プロデューサー”というポジション名の専任スタッフが、関係各所との細かなやりとりや交渉を担当するのですが、uzumakiにはそのような者はいないので、デザイナーが兼任する形で行います。そのため費用としては全体費用の5%と控えめな係数になっています。(実際に5%と係数を記載することはあまりないのですが、企画上分かりやすくするために表示しています。)プロデューサーがアサインされている場合はここが10%〜程度の設定・金額になると思います。

弊社では、資料を送る送料や打ち合わせのための交通費など、細々とした費用もここから捻出しています。

これらが全て合算されて、最終的に…

となるのです! お客さまにとって、想定していた予算と比べて、高いのか?安いのか?安ければそのままご依頼となりますし、あまりに安すぎれば(そうそう無い事ですが)何か見落としている作業があるのではないか?と精査することになります。
想定より高い、追加の予算もとれない…という場合は、予算内に納めるべく、制作内容を再検討していく、という流れになります。例えば…
※カッコ内の金額(△000,000円)は、今回の仮囲いの案件で考えると、これくらいは費用を落とせるのでは無いか?というざっくりの見込みです。

1.提案デザイン数を3→2に減らす。(△60,000円)

2.1面のみデザインして、他の面はリサイズのみの想定とする。(△200,000円)

3.標識風ピクトグラムをゼロベースで描き起こすのでは無く、安価な購入素材をベースに描いていく。(△100,000円)

4.アサインするコピーライターを、単価がもう少し低めでも対応いただける方にお願いする。(△50,000円)

5.印刷・施工の部分を安く対応いただける印刷会社にお願いする。(△100,000円)
※あるいは、データ納品前提とし、印刷・施工部分はお客さま側で対応いただくという事も考えられます。

6.シリーズ化やノベルティ制作など、別案件と合体させる。単品としての単純な値下げ対応をしたとしても、全体としては適切な利益が残るようにバランスをとる。(△100,000円)

などがすぐに思い浮かぶコスト削減策です。

こういった調整を行って、お客さまの予算枠に納めていきます。上記のような事ができるのも、工程ごとに費用を記載しているからこそです。

ちなみに…これはかなり極端な例ですが、

■企画・制作費一式・・・〇〇〇万円

■印刷費・・・〇〇〇万円

■施工費・・・〇〇〇万円

ーーーーーーーーーーーーーーー

■見積合計金額・・・〇〇〇万円

といった超ざっくりな見積書も時折見られるかと思います。結局総額が変わらないのであればこれくらいシンプルな方が良いという考え方も一理あるかもしれません。しかし、費用の調整があった際にお客さま側から見ると、何が変わった結果安くなったのか分からないため、調整後の納得感が得られにくい(制作会社側の内部的には細かな項目に分かれていて、検討・調整がされていたとしても)ですし、気分で金額が決まっているかのような、やや不誠実な印象にもなるのではないでしょうか。お互いの認識にズレも生じやすくなることで、場合によってはトラブルになる恐れもあります。

上記のような考えから、弊社の見積書は細かく項目を記載するようになっています。

皆様も見積書に関する考えはそれぞれにお持ちだと思います。機会がありましたら、皆様のご意見もぜひお聞かせいただけたらと思います。


終わりに

お金・数字の話ばかりで少々疲れたかもしれません。最後にもう一度、この素晴らしい仮囲いの話しに戻します。

コマツ新社屋の完成は2026年9月竣工(建物の完成)予定、2026年12月迄に仮本社の汐留からの移転を完了し、2027年から新社屋が稼働するようです。

ということは、2026年の夏頃まではこの仮囲いはあるのでしょう、ぜひ溜池山王にいらした方は立ち寄って、リアルなスケール感とともにコマツからのメッセージを受け取っていただけたらと思います。

コマツの特設サイトもぜひご覧ください。建て替え工事の記録も見られます。
■Komatsu Reconstruction Challenge | コマツ 特設サイト
https://reconstruction.komatsu.jp/ja/

追伸…

2025年7月下旬、溜池山王に行く用があったので「コマツの仮囲いどうなってるかな?」とチェックすると…

なんと!あの仮囲いのデザインが綺麗に無くなって、真っ白の状態になっていました。

次のクリエイティブの準備中なのか? あるいはこのまま最後まで真っ白のままなのか?

街で見かけたたグッドデザインを皆さんにもぜひ見て貰いたい!という思いを込めた企画でしたので、もう見られなくなってしまったのが残念だったのですが、おそらく前者、新たなグッドデザインを見られることを期待して、コマツに注目していきたいと思います。

| design | 7:52 PM | コメント(0) | トラックバック(0)
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