uzumaki blog|アートディレクター/グラフィックデザイナー 宮田圭介の日々を綴っております。

2023残暑見舞い 制作の裏側をご紹介します。

9月に入りましたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?今年の汗ばむ暑さはまだまだ続きそうなので、体調にはくれぐれもお気を付けください。今から秋の涼しさが待ち遠しくなりますね。

さて、弊社では毎年皆様へ、季節の挨拶状(グリーティングカード)をお届けしておりますが、今年は残暑見舞いとして、こんな大判ポスターをお届けしました。

黄色いTシャツ・・・・、見覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?そう、某テレビ局が毎年夏に放送する、チャリティー番組のパロディになっています。

なんといっても驚きなのが、このビックサイズ感!LサイズのTシャツのサイズを測り、それに近しいサイズになるように制作しました。なので、実質ほぼ実寸大の特大ポスターです。そしてポイントはなんといっても「蟹」が番組を進行しているという、シュールな世界観。真っ赤な蟹たちが地球を救うために、マラソンをしたり、募金活動したり、献身的に奮闘する姿をおもしろおかしく描いています。

季節の挨拶状は、本来はハガキで送るのが定番ですが、弊社ではこのように、デザイン会社ならではの、ちょっと工夫を凝らした物をお送りしています。例えば、暑中見舞い・残暑見舞いでは、蛇腹折りのポストカードセットや、コースターをお送りした事例もありました。

今回は、弊社の季節の挨拶状がどのように作られるのか?制作過程をご紹介いたします。


■季節の挨拶状の制作過程

①案だし・ラフ

まず思いつく限りの案を出し合います。いくつものアイデアを代表 宮田に見てもらい、どういう展開なら面白くなるか等のアドバイスをもらいながら企画を仕上げていきます。ここでは、雑でも良いので、思いつく限り大量のアイデアを描きおこすことが重要です。

よく宮田が口にする言葉は「企画段階では、質より量」。詳細に企画を練って1つのアイデアの質(クオリティ)を高めるのは、この段階では重要ではないということです。 この時点で一人少なくても20個以上はアイデアを出しています!

②企画会議

それぞれ考えた案を見せ合い、意見を出し合います。

こうしたら面白くなりそうだよね、と様々な意見交換を重ねて、企画の内容に厚みを持たせます。ここでもらった意見を参考に、①案だし・ラフの段階に戻り、また②企画会議をする・・・この流れを3〜4回くり返すことで、どんどん企画をブラッシュアップしていきます。

最終的にはいくつか有望な案を絞っていきます。

③仕様の決定

残った有望な案の企画をより詳細なものにしていきます。用紙、素材はどうするのか?どこの印刷会社に頼むのか?納期・御見積も調査し、時期的に実現可能であるかも含めて考えます。完成度・実現性など、それらを総合して見比べて、最終的にどの案を制作するのか決定します。どの案も問題無い場合は社員の投票で決める場合もあります。

④案の決定・制作

決定した案の制作にうつります。発案者が主導で印刷会社とのやりとりも行いながら仕上げていきます。基本的には 入稿→色校正→必要に応じて修正→再入稿 の流れになります。新人にとってはこの一連の流れを実際に体験することで、良い学びになります。

⑤印刷・梱包

印刷物が届いたら、弊社内で梱包作業にうつります。おひとりずつ丁寧に心を込めて梱包しています!

⑥郵送

郵便局にて発送し、皆様のお手元に届きます!

以上がざっくりですが、制作過程になります。ポイントは2つ。

ポイント1:季節の挨拶状として相応しい内容であるか

暑中・残暑見舞いであれば、夏を感じさせる、夏ならではの内容であると望ましいです。または、当時の年代ならではのネタ(時事ネタ)系も、企画としての理由付けがしやすくてアリです。

ポイント2:全ての人にわかる内容か

季節の挨拶状は、普段お世話になっている方にお送りしていますが、新人の方からベテランの方まで、幅広い年齢層の方がいらっしゃいます。そのため、誰もが面白い、と思っていただける物に仕上げる必要があります。例えばパロディネタを行う場合、当然「誰もが知っているもの」である必要があります。どんなに面白いネタでも、マニアックだと面白く思ってくれる人にばらつきが出てしまいますよね。


■今年の暑中見舞いは?

今年の大判ポスターは某テレビ番組のパロディでしたが、元ネタの認知度がバッチリあるので、多くの人に楽しんでいただけたかと思います。

しかし、なぜ「蟹」がモチーフなのか?と疑問に思われた方もいらっしゃると思います。今回はその理由を、制作過程も交えてご紹介していきます。

▼今年の残暑見舞い

【1. ラフ・案出し】

今回は若手のデザイナー3名がそれぞれアイデアを出し合いました。

▼ラフの一部。このようにざっくりと思いついたアイデアを描きおこしていきます。

折角なので、いくつか没になった案をご紹介します。

・「新鮮アイデア無限大スーパーボール」

うずまきのデザイナーの頭の中を、カラフルなスーパーボールに見立てた案。

きらきらで美しいもの、カラフルで可愛いもの、色合いがかっこいいもの、個性豊かなスーパーボールを真空パックにすることで、インパクトのある絵が出来上がるイメージです。

・サーモグラフィー案

ニュース番組のお天気情報などでときたま目にするサーモグラフィー(夏は特に)をかっこいいカラフルなグラフィックにしたら、素敵なんじゃないかと思いつきました。今年は丁度新人が2名入社したので、2人の自己紹介も兼ねての案でした。

まだまだ沢山のラフがありますが、 その中のひとつに某テレビ番組のアイデアがありました。

○某番組のネタを思いついたのは何故か?

毎年夏に放送するため、夏の風物詩であると思ったから。夏の風物詩といえば、スイカ、海、花火などもっと代表的な物がある中で、某番組をあえてネタにすることに意外性があり、驚きがあると思ったからです。

○なぜ蟹なのか?

この案のおもしろさは、なんといっても蟹がモチーフになっている斬新さですよね、最初は、海のモチーフとして度々登場するから、ということで、理由としてはそこまで深く考えていませんでした。
後に、「蟹のハサミがハートマークとピースマークに見える」ことに気づき、さらに英語で「LOVE&PEACE(愛と平和)」と表現し、24時間テレビの明るいイメージと合っている言葉なため、突拍子に合体して何か作れないかと思いつきました。

【2.再ラフ・案出し→企画会議】

しかしこのままだと、どうして残暑見舞いに「LOVE&PEACE」「蟹」なのか?「某テレビ番組となぜ掛け合わせたの?」と様々な理由付けが不充分でした。

この案で、どうしたら受け取った人がわかりやすいような、面白くて楽しんでもらえるような残暑見舞いになるのか考える必要がありました。

「LOVE&PEACE」「蟹」だけだと、元ネタのイメージが薄く、折角のパロディの面白さが出せていないと思いました。もっとパロディらしい面白い表現にするためにどうしたら良いでしょうか?

・パロディらしい表現にする

まず、とりあえず「蟹」から離れて、元ネタから連想されるワードをメモしてみました。(連想したワードが枝分かれした図。アイデア出しによく使う手法です。)「平和」「優しさ」「明るい未来」「毎年出演しているアイドルグループ」等・・・。そして、キャッチフレーズになっている「愛は地球を救う」というワードに着目しました。

「愛は地球を救う」は、某番組の有名なコピーなので、パロディにするならば、コピーをパロディらしくアレンジすることで、面白くなりそうだと思いました。

では、どうアレンジするのか?まず「愛」の部分を何か別のものに変えられないかな?と考えました。「○○は地球を救う」大喜利みたいなノリで色々考えてみました!

はたまた、モチーフとして考えている「蟹」をそのまま当てはめて、 「蟹は地球を救う」だとどうだろうか?

・設定をハッキリさせる

そうすると今度は「なぜ蟹が地球を救うのか?」という疑問が出てきました。ひとつのパロディ作品として、蟹が地球を救う番組ってどういうもの?

ポイントになるのは、なぜ蟹をモチーフとして選んだのか、です。「蟹のハサミがハートマークとピースマークに見える」こと、さらに英語で「LOVE&PEACE(愛と平和)」となり、24時間テレビの明るいイメージと合っているから、という理由でした。

では、「LOVE&PEACE(愛と平和)」にもっとメッセージ性を込めた番組(設定)にしてみたらどうか?と考えました。蟹のハサミは「愛と平和の象徴」であり、そんな蟹たちが、地球を救うことを目的に奮闘する番組、という設定を思いつきました。献身的な内容が、元ネタの番組の「平和」なイメージとも合うと思いました。

ここでキャッチフレーズを「LOVE&PEACE 蟹は地球を救う」にボリュームアップしてみました!

【3.仕様の決定】

では、ひとつのパロディ作品として、尚且つ残暑見舞いとしてどういう形にして送るのか?を考えます。

中には蟹のはさみが強そうという理由で、蟹を地球を救うヒーローにしたストーリーのミニ紙芝居を作る・・・という案もありました。あとは、「ファックスの応援メッセージ」を作ってみる、という案もありました。(元ネタのマラソンのゴールテープに使用したりと、度々目にすることができます!)

試行錯誤した結果、実際の番組の出演者で蟹のキャラクターをつくるのはどうかと思いつきました。某番組には、毎年出演されている看板タレントがいます。それが「某事務所のアイドルグループ」でした。彼らが番組を進行していく様子、物語を描いて、この番組が実在しているかのような設定を考えたら、面白そうだと考えました。

まずは彼らを「カニーズ」と命名し、ズワイガニ、タラバガニ等、日本に住む蟹をモデルに、アイドルらしい性格や名前などの設定を何種類も考えていました。

・カニーズをどのような表現で見せるのか?

イラストで見せる想定であれば、どのようなタッチで描くのかを考える必要があります。また、写真を切り貼りする見せ方もアリです。

今回の企画は、「蟹は世界を救う」という意味不明なコピーがシュールで、クスリと笑えるようなコミカルさがあると、企画内容にもマッチしていると考えました。その上で、イラストにするのであればリアルな蟹を描くよりも、デフォルメされた表現の方が合っている!と思いました。

▼イラストのラフ

▼別案。写真に、コミック調の目を描いてみました。

アイドル=イケメンということで、少女漫画風のキラキラ目で、大きさも誇張して描いてみました。写真にするとコラージュっぽく、アンバランスな雰囲気もシュールで面白いですよね。どちらにするかは物として何を作るのか?物語の描き方はどうするのか検討いた上で決めることになりました。

では、彼らが番組を進行していく様子をどのような媒体で表現するのか?を考えます。ストーリーが伝わるものが良いと思い最初はオーソドックスに「冊子」を考えましたが、それだけだとちょっと面白みがありません。例えば、ただの冊子ではなくTシャツ型の冊子にするのはどうか?

番組の代表的な商品である「Tシャツ」が冊子になる、見た目のインパクトがありますし、コンセプトを表現するにはぴったりの形でした。表紙は実際に番組のTシャツ風のデザインにしたら、本当に番組が実在するかのような面白さが表現できると考えました。

・Tシャツのデザインを検討

Tシャツのビジュアルデザインはとても重要です。なんと言っても、これが上手く出来ないと、この企画の元ネタが誰にも伝わらずに「何これ?」で終わってしまうからです。とりあえずカラーは黄色一択でした。(一番代表的なカラーなので)その上で、「実際にこの番組が売り出しているチャリティーTシャツ」という設定でデザインを考えました。

最初の段階では、2つ折り、蛇腹折り製本の物を検討していました。

▼中を開くとカニーズの番組進行の様子が描かれている。

2つ折りはTシャツのデザインがそのまま表紙と背表紙になるのが印象的でした。開いたときにカニーズのイラストが現れて、インパクト大な案でした。蛇腹折りは、様々なカラーバリエーションのTシャツが現れます。この場合はページ数が増えるので、内容もそれなりにボリュームを足しています。元ネタがTV番組なので、芸能雑紙の記事風にデザインする想定でした。というように、あらゆる方向性を想定して、他のデザイナーとADとも意見を出し合いブラッシュアップを重ねていきました。

▼そして、最終的に決定した案がコチラ。

今回一番のキモとなる「Tシャツ」ですが、実物大で、Tシャツのように折りたたんだ状態で送ったら面白そう!と考え、一枚物の大きなポスターで表現することになりました。Tシャツを開くと、カニーズが番組を進行する物語が展開されます。Tシャツのイラストは、今年のTシャツデザインを参考にしてみました。

パロディは一目で元ネタがわかりやすい事が重要なので、今年のデザインに寄せることでよりわかりやすくなります。元デザインにハートが描かれているので、蟹のハサミの一部もハートっぽくしてみました。

企画の内容を纏めると・・・

・有名なチャリティー番組のパロディ

・愛と平和を伝える番組で、キャッチコピーは「LOVE&PEACE 蟹は地球を救う」

・カニーズというアイドルグループがメインパーソナリティを務めて番組を進行していく様子を描く。(ストーリー性のあるもの)

・Tシャツの実寸に近い特大ポスターとして送る。

【5.決定案の実制作】

企画の内容・仕様が纏まったところで、案を決定します。

今回は見事当案が今年の残暑見舞いに決定しました。決定のポイントは2つありました。

①某番組の放送日とお届けできる日程日が丁度近いため、実際に某番組を観ていた方の記憶に新しいということもあり、強く印象づけることが可能だと考えました。

②Tシャツのデザインを蟹でパロディにする表現が、今年ならではであること。今年のTシャツデザインを元に制作したので、今年送らなければ意味がありませんでした。つまり、送るのにベストなタイミングであった、というのが決定のキモとなりました!

では、さっそく実制作に移ります。

今回はデザインをIllustratorで行い、カニーズのイラストはPhotoshopで描きました。ちなみに、カニーズのタッチはどうするのか問題、ですが、カニーズのイラストが複数必要になることもあり、コラージュ案はなくなり全てイラストで描くことになりました。少女漫画風の目であり、何これ!?と驚いて笑ってもらえたら・・・という思いから、シュールなギャグ漫画のようなタッチにしてみました。 (漫画家のしりあがり寿さんのタッチを参考にさせていただきました)

▼募金活動中のカニーズ

後ろには瓶に詰められた募金がズラリ。

表面(Tシャツ)のデザインは、ストリート感溢れるクールなグラフィック。普段描かないタッチでしたので、非常に苦戦しました。

こうして表面と裏面のデザインが仕上がりました。

裏面の物語の部分は、この番組に込められた思い、メッセージを映画のエンドロールのように書くことにしました。メッセージの周りをカニーズが番組を進行するイラストで彩り、ドラマチックな雰囲気にしてみました。(後に蟹鍋となって食べられてしまう運命であるカニーズの、走馬灯のようにも見えて切ない・・・)

【6.印刷・梱包】

印刷が無事に仕上がったら、梱包作業に移ります。

封筒は中身の見える透明なOPP袋にしました。ちなみにこれは、新品のTシャツを購入したような状態を再現しています!案によってはデザインに合った封筒を新たに制作する場合もあります。

こうして全ての梱包作業を終えた後、皆様の元にお届けします!

以上が、今年の残暑見舞いの制作過程でした。楽しんでいただけましたでしょうか?

〈2023残暑見舞い 無料サンプルプレゼント!〉

この「2023残暑見舞い」ですが、手元にない方で現物を見たい!欲しい!とご希望でしたら、お問合せフォームより「残暑見舞い希望」と記入の上、送信ください。社員が丁寧に梱包してお送りさせていただきます。

※残部数に限りがあるため、品切れでお届けできない場合がございます。予めご了承くださいませ。

最後になりましたが、お読みいただきありがとうございました!来年も引き続き暑中見舞いを制作予定ですので、またお知らせ出来たらと思います。 お楽しみに♪


| design | 8:16 PM | コメント(0) | トラックバック(0)
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