uzumaki blog|アートディレクター/グラフィックデザイナー 宮田圭介の日々を綴っております。

ポイントとは。消費者にとってその価値は。

何のことだと思うでしょうが、新型コロナの影響で少し時間ができたので、久しぶりに会社のお知らせではない日記(調べたら約4年ぶりか…)を書こうと思います。ヒマな方はお付き合いください。

2020年3月のある日、青い看板のコンビニ店に通販で注文した商品を受け取りに行きました。そこで、年配の女性定員(60代ぽい※以下店員さん)が年配の男性客(こちらは70代かな※以下爺さん)から叱責を受け、平謝りしている場面に遭遇しました。

あぁ…何があったんだろう。トラブルがあるとレジが混むから迷惑なんだよな…と思ってしばらく待っていたら、別の店員が現れて、バックヤードに荷物を探しに行きました。意外と早く済みそうで良かった。しかし、なかなか戻ってきません。慣れていないのか、見つからないのか。荷物を待っている間、隣のトラブルが嫌でも耳に入ってきます。まとめると、どうやら以下のような経緯でした。

1.店員さんはポイントを「使う」か「貯める」かを爺さんに尋ねた。
2.爺さんは「ポイントを貯める」意思を持っていたが、何らかの事情でやりとりがうまくいかず、店員さんは「ポイントを使う」と認識した。
3.店員さんがポイントで決済処理を行った。
4.爺さんはポイントを使いたくは無かったのでポイントを戻してくれと要求した。
5.決済処理が完了するとポイントは戻せないと店員さんが爺さんに伝えて謝罪した。
6.納得がいかない爺さんは店員さんに抗議…

ふむ…ありがちな話である。しかし、別に損をしたわけではないので、ポイントを頑張って貯めていた人であっても、普通はすぐに諦めて帰って行くだろう。しかし、爺さんは店員を責め続けている。ポイントに関する持論を述べながら、いかにポイントの価値が高いのか、ポイントを貯めるのに時間がかかったか、繰り返し責め続ける。それも大声を出すわけではなく、切々と抑えたトーンで繰り返し繰り返し。とんでもなくポイントに執着を持っているようだった。言っていることをまとめると、ほぼ以下の3点に集約された。

・どれだけこのポイントを貯めるために苦労したか。
・ポイントは現金より価値があるんだ。常識だ。
・ポイントは少なく見積もっても現金の2倍以上の価値があるんだ。

…???いやいやいや、ちょっと待ってください。今、斬新な超理論が飛び出しましたね。もう一度繰り返してみましょう。

・どれだけこのポイントを貯めるために苦労したか。 ←まぁわかる
・ポイントは現金より価値があるんだ。常識だ。 ←?
・ポイントは少なく見積もっても現金の2倍以上の価値があるんだ。 ←?????

この爺さんは何を言ってるんだと思うでしょう。考えるまでも無く、現金の方が価値があるに決まっているじゃないか。どこでも使える現金と、限られた店でしか使えない、しかも有効期限があったりするポイント。どちらの価値が高いのか。もちろん、現金の方が価値がある。

そのあたりで自分が受け取る荷物が来たので青い看板のコンビニを後にした。しかしあまりに衝撃的だったので、帰り道、爺さんが言っていたことを反芻しながら改めて考えを巡らせてみる。その結果、この爺さんが言っていることはそんなにおかしくないのかもしれない。それどころか、現金よりポイントの価値は遙かに高いのかもしれない…そういう考えもありだと思うようになったのです。

通常のレートだと、200円の商品を買って、やっと1ポイントが手に入る。1ポイントを手に入れるために、200倍の円を使っているのです。ならば、1ポイントの価値は200円と等しいのでは…? 1ポイント=200円???あれ…?????

自分の中の常識がぐらつき始めました。

しかしすぐに冷静さを取り戻します。いやいや、200円払ったら、200円分の商品を受け取っているのだから、そこで価値の交換は完了していて、受け取った1ポイントはおまけとして付いてきたものでしょ。

危ない危ない…

でも…日々の買い物でポイントを貯めるのって、本当に大変で気の長い話なのは確かです。コンビニのポイントって全然貯まらないですよね?いやほんと、びっくりするほど貯まらない。それをまとまった額貯めるには、とてつもない時間と忍耐、そしてお金が必要なんです。これには同意できる。おそらく皆さんも激しく同意だと思います。禿げ上がるほど同意、略して禿同です。もっと言うと、漫画「HUNTER×HUNTER」に出てくるハンター協会 ネテロ会長の「1日1万回 感謝の正拳突き」の境地です。1,000円分買い物してもらえるのは5ポイントですからね…5円分。そりゃー貯まりません。例えば1,000ポイント貯めるとしたら、どれほど時間がかかるか?毎日400円使っても1年半かかります。毎日同ブランドのコンビニで400円使うか?というと使わない人が多いのではないでしょうか。いても平日のみ、週5とかじゃないですか?ちなみに199円分の買い物だと0ポイントですよ?ダメダメ。うまくポイントがもらえるように常に脳内で計算しながら買い物しないと。そんな苦労を経て、毎日毎日コンビニに通って、やっとの思いで1,000ポイント貯まったとしたら?それは1,000円よりも価値が高いのではないか?2,000円以上分の価値があるのではないか??

あるのかもしれない……(汗)

自分は250ポイントくらい貯まったら喜々として缶ビールに使っちゃいますが、数十〜数ポイントに減った事を知らせるレシートを見て、寂しい気持ちになるのは確かです。もし、これが1,000ポイント、2,000ポイント、3,000ポイントと貯まっていたら。貯めるのが大変であればあるほど、今度は使いたくなくなる、使いたくても使えなくなってしまうのではないか…?

使えなくなるような気がする……(震)

いつしか自分は爺さんに共感し、「わかるよわかるよ、辛かったよね…これだけ貯めるのにものすごく苦労してお金も使ったのに、災難だったよね。」と思うようになっていました。実際の決済のやりとりは見ていない訳ですから、店員さんが悪いのか、爺さんが悪いのかは分かりません。おそらく、ちょっとしたお互いのやりとりの行き違いでしかなく、どちらにも非は無いんでしょう。ですがとにかく、大事に貯めたポイントを失った爺さんの無念さは理解できるし、ちょっと苦言を呈したくなるのは分かる…ようになってきたのです。それにしてもポイントを貯めているうちに、今度は使えなくなってしまう。…ポイントって難しいよね…奥深いよね…などと考えているうちにもう一度ポイントについて考えてみようと思いました。

そもそもポイントとは。

そもそもポイントとは。いや、私とて広告業界の片隅で長いこと働いているわけだからそれくらい分かりますよ。企業がお買い物額に応じてポイントを付与することで、お得感を醸成してお客に買い物をしてもらいやすくする。で、ポイントは限られたお店でしか使えないから、客はいつものお店で買い物をするようになる。昔ながらの販促手法ですよね。だから、値引きよりポイント還元の方が企業にとって有利って言いますよね。

…でも今日の出来事で気づかされたのは、ポイントがたくさん貯まると、今度はポイントを使いたくなくなる心理が働く事…!これは恐ろしいとすら思いました。爺さんはポイントを大切に大切に、大量に貯めているけど決して使わない客なのだから、これってコンビニにとって最高に良いお客様なのではないか?ロイヤルカスタマーってやつなのではないか?大半の客はある程度ポイントが貯まったらチビチビ使うけど、大量にポイントを貯め込んで決して使わない、今日の爺さんのような客は一定数いるのではないか?と。ポイントって、実によくできた、企業にとって有利な販促システムだと気がつきました。そして、人間の心理を巧みに利用した、悪魔的な販促システムだとも思いました。

あぁ…すっかり長くなりましたが、やっと考えがまとまってきました。結論です。


ポイントには現金の2倍どころか200倍の価値がある!
なぜならば、1ポイントを得るためには200円以上使わなければならないし、
ポイントを大量に貯めるには長い年月とお金が必要だから!!!(錯乱)

このポイントカードの擦り切れ具合を見よ!何万回カードリーダーを通したか!これだけポイントを貯めるのにどれだけ時間とお金を費やしたか!!!(白目)

ポイントに取り憑かれた、1人の新たなモンスターカスタマーが誕生した瞬間である…

おしまい。




| diary | 9:43 PM | コメント(0) | トラックバック(0)
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